【短編】LIVE HOUSE
最後の望みをかけて尋ねる。
「タイラ君は、バンドやってないんですか?」
「ん…。前のバンドがポシャっちゃって、今メンバー探してるところなんだ」
タイラ君の表情が、一瞬淋しそうに陰った。
(あ…この人、ほんとに音楽が好きなんだ…)
でもすぐに、タイラ君は明るく話し出した。
「でも、もしかしたら来月には何か進展あるかもしれないから、ライヴにはおいでよ。おれも来るから」
(えっ?会えるの!?)
あたしは思わず笑顔になって、パッと顔を上げた。
「見つけたら声かけるよ」
(うそ!うれしすぎる!!)
「あ、よかったらゲストに入れといてもらおうか」
(………?)
「…ゲスト?」
あたしが首をかしげると、
「ああ、ごめんごめん、初めてだっつってたよね」
タイラ君が説明してくれた。
「招待客っていうのかな。さっき受け付け通ったでしょ?そこにゲストのリストがあって、名前言えば通してもらえるんだよ」
(へぇ。そんなのがあるんだぁ)
「メンバーの身内とか仲間とか、何人かはタダで入れてもらえるんだ」
(タダ!?すごい!ラッキー!………って、そうじゃなくて)
「そんな、悪いです。ちゃんとお金払って入りますよ」
(タイラ君に会えるなら、2,000円くらい払うよ!)
あたしは頭の中で、お年玉の残りを確認した。
「ハハッ。若いのに気ー使わなくていいよ。キミ、まだ中学生くらいでしょ?2,000円ってかなりイタいじゃん」
わざとお兄さんぶった口調のタイラ君に、
「若いって、タイラ君も若いじゃないですか」
口を尖らせて反抗してみる。
「…のわりに、なんで敬語?」
ピシっと人差し指を向けられて、
「あ…」
口を覆ったあたしを、タイラ君は笑った。