【短編】LIVE HOUSE
何気ない話でひとしきり盛り上がった後、
「で、なんだっけ。…あぁ、そうだ。ゲストね。とりあえず今回は入れといてもらうよ」
「でも…」
あたしが躊躇すると、タイラくんは優しく目を細めた。
「実を言うと、昔の自分見てるみたいで、なんかうれしいんだ」
(わ…こんな顔もするんだ…)
ふんわりした笑顔に、ドキッとする。
「ライヴを初めて観て、メチャメチャ衝撃受けて、音楽にマジになった」
タイラ君は、かつての自分を愛おしむように過去を辿っているようだった。
そして、
「キミもおんなじニオイがする!」
ニッと笑った。
「このまま通り過ぎてほしくないんだ。もっとこの世界のこと知ってほしい」
一瞬見せた、真剣なまなざし。
今日初めて会ったばかりの通りすがりのあたしなんかのために話をしてくれることが、すごくうれしかった。
タイラ君の、音楽への愛情が、ひしひしと伝わってくる。
「んで、また来たいって思ってくれたら、そん時はチケット買ってくれると、バンドとしてはヒジョーにありがたいっス」
最後に後ろ頭をかいてペコッと頭を下げたタイラ君がなんだかかわいくて、あたしも自然と笑顔がこぼれた。
「じゃあ今回はお言葉に甘えて、お願いします!」
あたしもペコッと頭を下げると、タイラ君はうれしそうに笑ってくれた。