【短編】LIVE HOUSE



「キミ、名前は?」


「ミズグチ、リョーコ」


一瞬、タイラ君が目を丸くして、


「もしかして、リョーコのリョウって、良い悪いの"良"?」


タイラ君に名前を呼んでもらえるのはうれしかったけど、あたしは自分の名前が嫌い。


「単純な名前でしょ。イマドキの子なんだから、もっとカワイイ名前付けてほしかったよ」


両親の顔を思い浮かべながら口を尖らせて言うと、


「なんで。いい名前じゃん」


タイラ君がそれを制して、


「おれの名前、平たいの"平"に、良い悪いの"良"って書いて、平良っていうんだ」


今度はあたしが目を丸くする番だった。


「良子の…"良"?」


確かめるように聞いてみる。


「うん。絶対忘れないよ」


“平良君”は、そう言って笑った。


(あたし、"良子"でよかった)


単純な自分に、心の中で舌を出す。



< 15 / 18 >

この作品をシェア

pagetop