【短編】LIVE HOUSE
「キミ、名前は?」
「ミズグチ、リョーコ」
一瞬、タイラ君が目を丸くして、
「もしかして、リョーコのリョウって、良い悪いの"良"?」
タイラ君に名前を呼んでもらえるのはうれしかったけど、あたしは自分の名前が嫌い。
「単純な名前でしょ。イマドキの子なんだから、もっとカワイイ名前付けてほしかったよ」
両親の顔を思い浮かべながら口を尖らせて言うと、
「なんで。いい名前じゃん」
タイラ君がそれを制して、
「おれの名前、平たいの"平"に、良い悪いの"良"って書いて、平良っていうんだ」
今度はあたしが目を丸くする番だった。
「良子の…"良"?」
確かめるように聞いてみる。
「うん。絶対忘れないよ」
“平良君”は、そう言って笑った。
(あたし、"良子"でよかった)
単純な自分に、心の中で舌を出す。