【短編】LIVE HOUSE
「ライヴやってますか?……あの、初めて来るので、よくわかってなくて」
受け付けらしき台の奥に立つ、ニットキャップをかぶった男に声をかける。
「ライヴはもう中盤だけど、いい?ドリンク代込みで2,000円」
それは中学生にとっては大金だったが、あたしはすぐに財布から千円札を二枚取り出した。
「はい、半券とドリンクチケット。中のバーでドリンクと交換してね。あ、未成年はアルコールお断り」
ミシン目の入った紙切れを受け取る。
「ありがとうございます」
ペコリと頭を下げると、ニットキャップの男は二カッと笑った。
「入り口はそのドアね。じゃ、楽しんで」
"初めて"と言ったためか、あたしが若すぎるせいか、受け付けの男は意外にも親切だった。
もう一度小さく頭を下げて、あたしは受け付けの先にある重いドアを押し開けた。