【短編】LIVE HOUSE
ふと、ベーシストが顔を上げた。
他のメンバーに比べて、ずいぶん若い。
もしかすると、あたしと同じくらい…?
切れ長の瞳で観客を見渡し、挑発するように口元で笑った。
(あっ…今、目が…)
目が合った、なんていうのは思い込みだろうけれど、あたしのいる辺りにも視線が流れたのは確かだった。
観客のノリを確認し、うれしそうにニッと笑って、目を閉じた。
頭を振って、ベースに覆いかぶさるようにして大きなリズムを全身で刻む。
(ベースってこんなに激しいんだ…!)
今まで、目立つギターやボーカルに目がいってしまいがちで、何も知らないあたしにとってベースは地味な存在だった。
でも本当は違う。
ギターもボーカルも、ベースやドラムの作り出すリズムの上で、初めて生きてくるんだ。