《完》シークレットコードにご用心
本棚に背中を押し付ける
ようにして立つ父と。


それを悲しそうな瞳で
見つめる、着物姿の一人の女性。



……心労で白髪の混じった
髪と、くぼんだ目元、頬。


それでも、昔はさぞ綺麗
だったんだろうと思わせる
形のいい鼻と、優しい
性格を思わせる眼差し。




そこにいたのは、間違いなく。




――3ヶ月前に亡くなった
はずの、母親だった――……。




「だ、誰だっ、お前はっ!?

文恵のはずが――文恵の
はずがないっ!!」


金切り声に近い父の声に、
幹人もようやくハッと我に返る。


(そうだ。母さんのはずがない。

だって母さんは……死んだんだ)
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