《完》シークレットコードにご用心
幽霊だなんて非現実的な
ものは信じていない。


それに目の前の母親は、
どう見てもハッキリとした
実体だ。


透けてもないし足もある。
それに何より、明らかな
存在感が、それを物語っている。


だから母のはずはない。

それなのに――……。


「私以外の……誰に見えますか?

あなた……。幹人……?」


どこか苦しそうに漏らした
声は、懐かしさで涙が
出そうになるほどに、
まさしく母の声だった。


「そんな―――そんなバカな!

母さん、どうして……!?」


こんなことはありえない。

ありえるはずがない。


それなのに、自分を見た
母と目が合った途端、
幹人は溢れ出る涙を止める
ことができない。
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