《完》シークレットコードにご用心
今だにこの非現実的な
状況がなんなのか、到底
冷静な判断などできない。


でも、これだけは気づいた。


自分にとっては愛しく
懐かしい母の姿も、父に
とってはそうではないのだ。


むしろ父にとっては、
自分の背負った十字架を
見せられているに等しいだろう。


だからこそ………見ろ、
あんなに怯えるように
本棚に張りついて、微かに
体を震わせてすらいる……。


(いい気味だ。自分の罪の
重さに、震えあがればいい)


「――父さん。

せっかくこうして母さんが
来てくれたんだ。

俺達も、ちゃんと別れを
言おうじゃないか」


気がつくと、暗い笑みと
共に、そんな言葉が口を
ついて出ていた。
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