嘘、
「……」
「……」
なんだか分からない空気。
貴樹浩平が見つめてくる。
私もつられて見つめる。
特に変な意味は無いけど、見つめたまま。
彼も彼で、何もしてこなかった。
ただ見つめただけ。
数十秒すると、表情は元に戻り、見つめなくなった。
「……やっぱユエちゃんは可愛いな。見惚れちゃった。」
「面白くない冗談ですね。」
「やだなー、俺は面白くない冗談なんて言わない男だよ?」
常に言ってる気がする。
「その代わり、面白い冗談ならいくらでも。」
それが面白くない冗談だと思うんだけど。
「……ユエちゃんはどんな本読むの?」
「……どうでもいいでしょ。」
「いやいや、図書委員長として、利用者の声を聞かねばと思いまして。」
何が、聞かねばと思いまして、よ。
顔にかいてるよ。これなら私も話すかな?って。
どうしてこいつはここまで私と話したいの。
どうしてこいつはここまで私と話すの。
どうしてこいつはここまで私と絡むの。
「……ジャンルは様々。面白いって聞いたらなんでも読む。」
「へぇー。俺はね、童話が好きなんだよ。」
子供か。
「あ、今、子供か、って思ったでしょ?」
何故バレた。
「みんなにも言われるんだよね。ガキっぽいって。でもさ、童話って結構楽しいんだよ?」
「知ってるよ。」
「シンデレラとかさ、可愛い女の子が主人公だし。」
それはアンタの好みの問題でしょ。
「それに、裏話とかもあるし。シンデレラのお姉さんは靴に合うように自分の足を削いだってのもあるし。」
よくある話だな。
でも、私はこのときの彼になんだか妙な違和感を感じていた。