嘘、
思い込んでいたら、鐘が鳴った。

次の授業が始まる。

早く屋上から出ないと。


「あ、私も一緒に行く。」


彼女はそう言って私と一緒に屋上を出た。

屋上を出て、私が教室へ向かう途中、

幸いなのか、不幸いなのか、

貴樹浩平と出会ってしまった。

彼は、私を見つけるなり、微笑んだ。

そして近づいてきた。


「ユエちゃん、久しぶりだね。」


と声をかけた。

私はなんとも言えず、答えなかった。

すると私の代わりに後ろにいた秋絽玲が、


「浩平ー!久しぶり!」


先ほどまでとは違う。

まるで女子特有の『仮面』を被って、

彼に正面から抱きついた。


「秋絽、どうしたの?」

「えへへー、久しぶりで嬉しくなっちゃって。」


彼女は笑顔で言った。

私とは違う嘘吐きだった。


「そうじゃなくて、なんでユエちゃんと一緒にいるの?」

「だって仲良くなっちゃったもん。ね、ユエ!」


いきなり名前を呼ばれて、ビクリとしたが、

私も仮面を必死に被って、


「……そうですね、玲先輩。」


と受け流した。

その表情を見て彼は、何か言いたそうな顔をした。

私はそれが分かった。

だから先手をうった。


「今から授業なんで失礼しますね、玲先輩。」

「うん、じゃあねー!」


彼女は明るく手を振ってくれた。

彼は言いたそうなままの表情をしていた。

私は一体、今、どんな顔をしているのだろうか?
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