嘘、


「……秋絽、本当にユエちゃんと仲良くなった?」


貴樹浩平は結柄が教室に戻った後、秋絽玲に聞いた。

秋絽玲はまさか本当のことがバレたんじゃないかと不安になったが、


「なんでそんなこと聞くのー?」


と、甘ったるい声で聞き返した。


「いや、本当だったら少々やっかいだな、って。」

「やっかい?」


その一単語に彼女は反応した。

でも彼は受け流す。


「ううん、なんでもない。」

「もしかして……浩平、ユエのこと、好きになった?」


彼は少々ためらったが、


「……そんなこと、あるわけないじゃん。」


とまた微笑んでかわす。


「ダメだよ、浩平は『みんな』の浩平なんだから。恋人作っちゃダメ。」

「はいはい。」

「本当だよ!?嘘ついちゃダメだよ!?」

「分かってる分かってる。じゃ、俺も授業あるからさ。」


そう言うと、先ほどまでくっついていた秋絽の体をひっぺがして、

そそくさと教室に戻った。

その姿を見て、秋絽はただ一言。


「……浩平は私のなんだから……あんな子になんかやらない……」


と、拳を握り締めつつ、呟いた。
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