嘘、
そして今日も、


「ユエ、おはよ。」

「……おはよう、ございます。」


私は日課であるかのように屋上へ来ていた。


「別に敬語でなくてもいいのにさ。」

「一応、先輩なんで。」


そういえば、

貴樹浩平なら敬語で喋ってほしいと逆に拗ねていたな。


「……ね、ひとつ聞いていい?」

「なんですか?」

「ユエ、浩平のこと好きじゃないよね?」

「……それ、前も言いませんでしたっけ?」

「……うん、聞いた。でもちょっと不安になった。」


秋絽玲は、少し切なそうな顔をしてすぐ、空を見上げた。

でもそこに私は違和感を感じてしょうがなかった。


「……私さ、ずっと浩平のこと好きだったんだ。」


空を見上げたまま、彼女は話を切り出した。


「小学校から同じで、それからずっと。浩平がいるからこの学校だって受けた。」


私は何も言えなくて、

ただ話を聞いた。


「その間に何度、いや、何十回も浩平と急に仲良くなった女の子を見てきた。」


きっと、その中に私は含まれているんだろうと思った。

しかも、その最先端に。


「元々浩平は人気者で、そういうのが多かったから仕方ないな、って思ってた。」


その言葉で今までの彼が容易に想像できる。


「だけど、私はいつも友達止まり……なんでだろ。」


私が彼女の気持ちなんて分かるわけがない。

ただ、三者からして、私は彼女が羨ましかった。

恋をして、その人の為に尽くそうと努力して、羨ましかった。

……私のときは、そんなこと、とてもできなかった。

関係が壊れなければいい、ってことを最優先して、

自分を幾度と無く犠牲にして、

自分を壊して、

壊して、

滅ぼして、

そして自分だけでなく、

周りも壊した。

そして関係も壊れた。

恋、なんて安易なこと、できなかったから。

ただ、『あのとき』は怖かったから。
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