嘘、

冷たさと優しさ

どうやら私は嫌な女になったようだ。

貴樹浩平が私なんかに構うから女子からそう思われる。

男子からは逆に注目されて困る。

ほら、また変に指さされてコソコソ。

……慣れてるけどね。

なのに元凶はいつもいつもヘラヘラしちゃって。

アンタが悪いのにどうして私が――


なんて思ってふと上を見上げると「図書室」と書かれたプレート。

あいつのせいだ。

貴樹浩平のせいだ。

先輩だけど呼び捨てしてるあいつのせいだ。

確かに本借りたいな、とは思ったけど。

……思ったけど。


腕時計の時計で時間を確認。

大丈夫。今は授業と授業の間の中間休み。

アイツはいない。

居たらサボリ決定。

3年なんだから勉強くらい出てるでしょ。

と思って図書室に入った瞬間、背後から誰かに抱きつかれる。

それは声ですぐに分かった。


「ユエちゃーん、どうしたの?珍しいね、ここに来るって。」

「……サボリ。」

「サボリなんかじゃないよ。ちゃんと先生にお腹痛いかもって言って抜けてきてる。」


それがサボリなんだよ、貴樹浩平。

背後から回された腕を見て、彼の今からの授業は体育なんだってことが分かった。

体操服だったから、ジャージなんだ。ブレザーじゃない。


「……離してよ。」

「なんで?喜んでるでしょ?」

「どうしてよ。」


そのときの私の表情がとても喜んでいるようには見えなかったからか、

すぐに彼は腕を離して、私の正面の席に座った。


「普通、女子ってこういうことに喜ぶはずなんだけどな。」

「女子をみんな一緒にしないで。」

「俺の周りの女子はみんなそうだったからさ。」


自慢?ナルシスト?軽くモテる自慢?

やめてほしいんだけど、切々と思う。
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