≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
ハルを見た瞬間・・・


オレは硬直したのと同時に、逃げ場を探した。


ハルの開いたサマーコートの中身は、裸体ではなく、ただ永遠に続く闇だった。


胸から太ももにかけて、まるでブラックホールのような真っ黒なよどみが渦を巻いていた。



「ヤバイ!!」



しかし、後ろは壁。


さらにハル・・・ハルらしき女性は顔を近づけてきた。


その顔を見て、オレは髪の毛が逆立った気がした。


顔もブラックホールになっている。



「ねぇ・・・ヒカル・・・・、ねぇ・・・ヒカル・・・・、ねぇ・・・ヒカル・・・・」



女の後ろに、古ぼけたラジカセが、ハルの声で同じセリフを何度も繰り返していた。


オレは体中から、一気に汗が噴き出ていた。



女の顔は、既にオレの間近にあった。


ものの数秒で、オレはこの中に吸い込まれることを、直感で感じた。


女から目を反らし、辺りを見ると数メートル先にドアがあった。


よく団地にありそうな、古い扉。



『あそこから出なきゃ!!』



オレは必死にもがき、なんとか足を立たせようとした。



なんとか立ち上がろうとするが、Tシャツが何かに引っ掛かって、前へ進めない。



ハァ、ハァ、ハァ・・・・


オレはシャツのひっかかりに、暗がりの中手をやるが、引っ掛かっている原因がよく分からない。


後ろ手で、ジタバタしてみるが、引っ掛かっているなにかがどうしても取れない。


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