≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
無力さの象徴
絵里香は本を仕方なく持ち帰った。
家の門を開けると、いつも番犬のハチが絵里香の帰りを大喜びでクルクルと跳ね回る。
しかし、そのハチがその日は絵里香を出迎えていなかった。
「ただいま~」
絵里香は玄関を開けると、玄関の隅でぐったりとしているハチを発見した。
ハチはゆっくりと呼吸してはいたが、絵里香が家の中へ入るとやっと少しだけ頭をあげたが、
またすぐにアゴを床に置いてある、自分の前足に乗せた。
「絵里香、おかえり。」
キッチンに居た母親が絵里香を出迎えた。
「ママ、ハチどうしたの?!」
絵里香は大好きなハチの様子が心配でならなかった。
「お昼過ぎまでなんともなかったんだけど、ママが買い物から帰って来たらぐったりしてたのよ。」
「ちゃんとお水は入ってた?ゴハンはあげた?外が暑すぎたんじゃない?」
絵里香はハチの頭を撫でながら、母親に尋問のように尋ねた。
「お水は入っていたわ。でも元気がなくてゴハンを食べないの。多分、暑くてバテているのだと思うわ。」
「じゃぁ、涼しいところにいたら良くなるかなぁ?」
「きっとね・・・」
それから絵里香は3日間ほどハチの世話をしたが、ハチは一向に元気を取り戻さなかった。
「ママぁ・・・ハチ死なないよね・・・・」
絵里香は看病の甲斐もなく弱っていくハチを見て、たまらなく哀しくなった。
「えぇ・・・お医者様も暑さで弱っているだけだっておっしゃっていたから、大丈夫よ。」