≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
休日は山に近い町まで出向いて、駅周辺で署名活動を行った。
とにかく目立たないように、ほとんど1人で行動した。
中学を卒業し、高校入学までの休みの期間も、ほとんどその事に時間を費やした。
絵里香の行動で、空港建設が行われる町の大人たちも、反対派が独自で署名活動を行いはじめた。
町では、空港建設を反対する団体も出来上がった。
「絵里香。キミはよく頑張っているね。最近、木々が良い風を出すよ。キミの行動を喜んでいるんだ。」
絵里香の動きが、空港建設への足かせになる度、ナイジェルは絵里香を褒め、ねぎらった。
絵里香は、父親に何も話せない分、ナイジェルが優しく声をかけてくれる事が嬉しくて仕方なかった。
今、絵里香の住む家で、絵里香の事を理解し、努力をねぎらったり、励ましたりしてくれるのは、ナイジェルだけであった。
絵里香は、毎日ナイジェルが自分を褒めに来てくれる事を、心待ちにしていた。
その事が、絵里香が生きている中で唯一の楽しみであった。
高校に入学して、サツキやミユといった、新しい友人も出来た。
しかし、絵里香の中で、決して山を伐採させないという思いだけは消えないでいた。
その情熱が消えてしまった時、自分の大切なモノを失うという事を、絵里香は痛いほど知っていたからだ。
絵里香は、新しいクラスメイトや、まだ友達になって間もないサツキやミユにも、署名活動の事は内緒にしていた。
絵里香だけで集めた署名は、すでに2千人を越えていた。
その頃であった。
初めて日村令子という霊能力者を、父親から紹介された。
「絵里香。今日・・キミのお父さんが、お客様を招待しているね。」
「うん。なんか、霊感の強い人と、その人の先生なんだって。
なんだか行動がパパらしくなくて、緊張しちゃうけど、
どんな人が来るのか、ちょっとだけ楽しみ。」