≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
いつかは、2千人以上集めた署名を、父親に見せるつもりではあった。
しかし、タイミングというモノがある。
自分から言い出すのと、父親から尋ねられて白状するのとではワケが違う。
しかも、今日はミユから人が亡くなった事まで、山田が隠していた話しを聞いたばかりだ。
絵里香の正義感が、どうしても父親の潔白を聞いた後でなければ、自分の事を話す気持ちにさせないでいた。
「私も・・・パパに聞きたい事があるの・・・」
「質問しているのはパパの方だ。先にこちらの質問に答えなさい。」
山田は、静かに語りながらも、こめかみの血管は浮いていた。
こんな時の山田が、火山に例えるなら、噴火寸前だという事も、絵里香は重々承知だった。
「空港建設の件で、人が亡くなったって本当なの?!」
絵里香は、怒鳴られる事を承知で、勇気を振り絞って発言した。
案の定、山田は絵里香を睨み付けた。
「お・・・お前は・・・そんな事までコソコソ嗅ぎ回っていたのか・・・・」
「そんな事・・・そんな事って!人が亡くなってるんだよ!しかも、それが空港建設を反対した為だって事さえも、誰も知らされてなかったそうじゃない!!
パパ、あんまりだよ!!そこまでして、山の植物や動物だけじゃない!そこに関わる人を平気で傷つけて・・・
私だけでも、2千人の人が署名してくれたよ!!自然を破壊することに反対してくれた人たち!!
パパは子供の意見だ・・って、相手にしてくれなかったけど、私だけじゃなかっ・・・・」
----バチーーーーーーンッッ!
「きゃぁっっ・・・」
絵里香は、頬に襲った突然の衝撃に床に倒れた。生まれて初めて父親から頬をぶたれたのだった。
山田の顔は、火を噴くように真っ赤に膨らんでいた。
「それが親に向かってやる事かぁ~っっ!!・・顔を合わせれば、毎日毎日・・土地の事をとやかく言いおって・・・何も分からん子供が!・・・それでもお前は家族か!!」
絵里香はビリビリとしびれる頬を手で押さえながら、山田を見上げた。