≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
オレが黙って振り向くと、ハルはソファーに座ったまま、こちらを見ていた。



「・・・おばさん・・1人だと気の毒だったから・・・

ハルが来たんなら、もう・・いいかな・・と、思って・・・」


オレは、ハルから何か訊かれたワケではなかったが、とりあえず、黙って立ち去る理由をハルに言い残さねば、と思った。


「そ・・っか・・・。

・・・うん。

ごめんね、忙しいのに・・・居てくれて・・・

ありがとう・・・」


最後の『ありがとう・・・』を、ハルはポツリと言った。

オレにはその有り難うが、『帰らないで・・・』に聞こえた。

きっと、こんな人気のない病院に1人、手術中の母親を待つ寂しさは、オレの想像を越えているかもしれない。


「いや・・別に・・・いいんだ、そんな事・・・。

ハルこそ・・仕事中だったんだろう?」


ハルは、高級ブランドバッグを膝に置き、両手でそのバッグの手提げ部分を握りしめながら、ジッとうつむいていた。


「職場には・・・最初から、言ってあるから・・・」


『お店』と言わず、『職場』と言ったのは、ハルの精一杯の抵抗なのだろう。

今の、ホステスという仕事は、あくまで『生活』のためだと主張するための抵抗・・・。


「へぇ~・・、ハルの職場、結構待遇良いんだね。

うちの会社は、事情なんて後回しだから・・・」


もしかすると、今のオレの返事は、ハルにイヤミに聞こえたかもしれない。

無論、そんなつもりはなかったのだが・・・


「私のこと・・・軽蔑しているんでしょう・・?!」



「・・・なにが・・?!」


冷静に言葉を繰り出すハルに、今度はオレが抵抗した。

分かりきっている内容のクセして・・・。



「私が・・・この仕事・・してるコト・・・」




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