≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
しかし、オレは力を落としながらも、ハルをこのままにしておいてはイケナイという気持ちだけは残せていた。

こんなに無力ながらも、日々供養家として、日村先生に少しずつ教えてもらい、霊的世界と関わっているオレでさえこの有様だ。

ましてや、霊的世界と普段接触を意識していない人たちにとっては、このハルに憑いている霊は、あまりにもタチが悪い。

このままでは、被害者が増える一方だ。

オレは、目を閉じながら・・心を決めた。

ハルと共に、朝を待つことを。

霊の浄化は、どんなに低級な霊でも陽のある間、出来れば午前中にやる事が望ましい。

夜は、霊の力を増幅させる。

これはこの世界の基本だ。

オレは、そのままソファーにふんぞり返り、寝の体勢に入った。


「・・・帰るんじゃなかったの!」


居座る様子のオレを見て、ハルはまだツンケンした口調で言葉を振った。


「・・とりあえず・・・おばさん・・気になるし・・・」


オレは、目をつむったまま答えた。


「ど・・同情ならやめてよ!・・言うだけ言わせといて・・・惨めじゃない・・・私・・・」


オレは何も答えないでいた。

とにかく、朝を待って、霊を浄化する。

今のオレの目的は、その事だけだった。


しかし、その夜のその時・・・

オレに日村先生から、とても重要な電話があっていた事など、知る由も無かった。

オレは、おばさんの手術機器に影響があってはならないと、電磁波に気を遣い、ケータイの電源を切っていた。

この、ピッタリのタイミングで、オレを電話に出させないなんて・・・

本当に・・・

奴らの凄さとは・・・生きている人間の想像を、遥かに超えていた。


「・・・ヒカル・・・さっきは、ごめんね・・・」


ハルが、突然優しい口調になった。

勿論、もうその調子の良さに、騙されるもんか・・・

オレは、心の中の平静を保っていた。




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