≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜


「人間は感情の生き物だもの、当たり前のことだよね」


令子の言葉を遮り喋ると、絵里香はミユとサツキに同意を求めるような視線を送った。


「絵里香ちゃんが、今とても大切な事を言ってくれたわね。」



絵里香は不機嫌そうに床に視線を落とした。



「別に・・・そう・・教えてもらったから・・・」



令子はそのまま続けた。



「私たちが何かを『感じる』のは、見たり、聞いたり、味わったり、香ったり、触れたりした事によって生まれる」



「はい・・・」


サツキが応える。



「例えば感じた事の全てを言葉で表現できるかしら?」


「全てを言葉では表現出来ません。思いが溢れてどうしようもなくて、でも伝えたくても言葉ではとても足りないことばかりだし、どう表現していいのか分からないでいて、今もそうだし…」


サツキが涙目になりながら言葉に詰まる


「そうよね。私たちが口にしているのは感じた事のほんの一部。その一部だけを知っている言葉で『こういう思いでいる』と表現するけれど、それは全てではない。脳の中で分かり易く解釈や解説しようとすればするほど感じた本当のこととは違うものが仕上がったりもする。」


「だから、その事がどうして愛の度合いが変わる事に繋がるんですか?論点ズレてません?」


絵里香の言葉に令子がクスッと笑うと、絵里香は眉をしかめた


「何が可笑しいんですか?」


「ごめんなさい、可笑しいわけではないの愛しく思っただけ。気に障ったなら謝るわね、ごめんね」


絵里香はパッと令子から顔をそらした。


「分かっておかなければならないのは、言葉にならない事もしくは言葉に出来ない部分によって、お互いの愛を成長させたり枯れさせたりしているということ。ほんの『ひとすじ』の感じたものから引き抜かれた言葉をいつの間にか『すべて』だと思い込んでしまう事が本当のことを見失わせてしまうもの。」


「だけど、愛だと感じた事を記憶に留めておくために人は言葉にしたり絵にしたり音にしたり踊りにしたりするんだと思います。」


ミユが呟く。


「そうよね。そこには『思い』が表面化している。そうしてそれぞれの表現を見る事で人間独特の『共感』が生まれる。その共感の深い部分は各々個人の持ち物だから表面の一部で共感しても深いところでは全く違うことでその感覚は湧いていたりする。


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