≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」


サージェルは、息を切らしながら、走り続けた。


ほんの少し様子を見て、子鹿が産まれてるのを確認し、今夜山焼きが行われるこの地帯から遠ざければ、すぐに帰ってくるつもりだった。


湖を通り過ぎ、だんだんと、ほら穴に近づいて来た。


「ハァ・・・ハァ・・・鹿は・・・大丈夫だろうか・・・」


ほら穴の入り口が見えると、サージェルは穴の外で、自分に急ブレーキをかけた。


もし産まれていたら、親子を驚かせないように、ほら穴には、そーっと近づいた。


ほら穴を覗いた瞬間、母鹿と目が合った。


『居た!』


サージェルは、母鹿の様子を注意深く観察した。

母鹿のお腹は、まだ大きいままであった。

母鹿は、かなり神経が立っている様子だった。

サージェルさえも、近づけたがらないような殺気を放っていた。


「まだ産まれていないのか・・・早く出て来い!」


サージェルは、ほら穴の入り口から、祈るように見つめた。

時折、母鹿は、苦しそうに鳴き声をあげた。


「頑張れ・・・頑張れ・・・もう一息だぞ・・・」



サージェルは、時間も忘れ、母鹿を見守っていた。

太陽は、一旦真上まで昇り、それから段々とその姿を西へと傾けて行っていた。


その頃、サージェルの自宅では、買い物から戻った母親が、パニックになっていた。

サージェルの姿を、家中狂ったように探し回り、家の回りを方々見回し、何度も何度も名前を呼んだ。


「サーーージェルーーーーーッッ!!・・サーージェルゥーーーーーッッッ!!」



何度呼んでも返事の無い息子に、母親は血相を変えた。



「大変・・あの子・・・森へ行ったんだわ・・・。

どうしましょう・・・。

どうしたらいいの・・・。

陽が落ちたら山焼きが始まってしまう。

あぁ・・・こうしては居られない・・・

ハァッ・・ハァッッ・・・サージェルを探さなければ・・・」

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