≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
サージェルの母親は、森へと走った。

サージェルがよく行くと話してくれた、湖にも着いた。

しかし、そこにもサージェルは居なかった。



「サージェル・・・ハァ・・ハァ・・サージェル・・・」



母親は必死だった。


母親が自分を捜し回っている事など、露ほども思わず、サージェルは母鹿のお産を見守っていた。

母鹿が、一回大きく鳴いた。


---- ドパッッ!!


それと同時に、母体から子鹿の足が見えた。


「あぁ・・・逆子だ!!

まずいよ・・・手伝ってあげなきゃ!!」



外では陽がだんだんと落ちて行っていた。

母親は狂ったように探したが、いよいよサージェルは見つからなかった。

泣きながら、息子を呼び続け、フラフラと森を歩き回った。



「もしかしたら、もう・・家に戻っているかもしれない!!」


母親は、急いで家へ帰った。

家に愛する息子の姿がある事に、希望を託して。

だが、家に戻ると、その希望は、砂城のように崩れた。

家の中には、ただ・・シーンとした空気があるだけだった。

母親は、外に飛び出し、近所の家々を回った。


「息子が森からまだ帰らないの!!

お願い!!皆さん、探すのを手伝ってくれませんか?」


「サージェルが・・・!?

しかし、間もなく山焼きが始まる・・・

探してあげたいのは山々だが・・・

日が悪い・・・

王様は、子供1人のために、行動を変える人では無いからねぇ・・・」



母親が、どんなに泣いて頼んでも、首を縦に振って、息子を一緒に探してくれる人は居なかった。


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