≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
薄暗かった、銀庭の中が、突然明るくなった。
高い石塀の上に、点々と置かれた松明(たいまつ)に火が点けられたのだった。
サーシアは、辺りを見回した。
罪人でうようよしていると思っていたが、人の気配が全く無い。
ただ、銀庭の内側の石塀は、古くなった血が染みこんでいるかのようだった。
その石の壁も、地面の石畳も、大部分が、赤黒く変色していた。
サーシアは、辺りを警戒し、身を固くした。
「サーシアよ!」
松明の更に上の方から、王の声が響き落ちてきた。
サーシアが見上げると、闘技場を見下ろすかのように、石塀の更に高い所に王は立っていた。
「・・・・」
サーシアは、黙って王の言葉の続きを聞いた。
「今から、狼をそこに放す。
まずは、一匹だ。
10分経過したら、また一匹追加する。
さらに10分経てば、また一匹追加だ。
狼は数日何も食わせておらん。
奴らも死に者狂いで襲ってくるであろう。
ガイルが戻るまでそれを続ける。
よいな。」
王は、サーシアにそう告げると、後ろに控えておいた、たっぷりとした椅子に、ドスッと腰掛けた。
「オ・・オオカミ・・・」
サーシアは、あまりの恐怖に足下が震えだした。
喉はカラカラに渇き、呑み込むツバさえ出なかった。
ヨロヨロとした足取りで、壁際に背中をピッタリとつけた。
先程兵士から渡された短剣を、グッと握りしめた。
「・・・短剣か・・・。
まぁ・・相手は女だ・・・
それくらいは見逃してやろう。」
王は、そんな一人言を言いながら、銀庭を見下ろしていた。
高い石塀の上に、点々と置かれた松明(たいまつ)に火が点けられたのだった。
サーシアは、辺りを見回した。
罪人でうようよしていると思っていたが、人の気配が全く無い。
ただ、銀庭の内側の石塀は、古くなった血が染みこんでいるかのようだった。
その石の壁も、地面の石畳も、大部分が、赤黒く変色していた。
サーシアは、辺りを警戒し、身を固くした。
「サーシアよ!」
松明の更に上の方から、王の声が響き落ちてきた。
サーシアが見上げると、闘技場を見下ろすかのように、石塀の更に高い所に王は立っていた。
「・・・・」
サーシアは、黙って王の言葉の続きを聞いた。
「今から、狼をそこに放す。
まずは、一匹だ。
10分経過したら、また一匹追加する。
さらに10分経てば、また一匹追加だ。
狼は数日何も食わせておらん。
奴らも死に者狂いで襲ってくるであろう。
ガイルが戻るまでそれを続ける。
よいな。」
王は、サーシアにそう告げると、後ろに控えておいた、たっぷりとした椅子に、ドスッと腰掛けた。
「オ・・オオカミ・・・」
サーシアは、あまりの恐怖に足下が震えだした。
喉はカラカラに渇き、呑み込むツバさえ出なかった。
ヨロヨロとした足取りで、壁際に背中をピッタリとつけた。
先程兵士から渡された短剣を、グッと握りしめた。
「・・・短剣か・・・。
まぁ・・相手は女だ・・・
それくらいは見逃してやろう。」
王は、そんな一人言を言いながら、銀庭を見下ろしていた。