≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
その頃、ガイルは全速力で森へと向かっていた。


『サージェル・・サージェル・・・きっとあの洞窟だ・・・急がねば・・サーシアが・・・』


ガイルは、自分の妻が、今頃どんな思いで銀庭に居るのかを想像しただけで、心臓を突き破るような痛みが走った。

全速力で馬を走らせ、その風が、ガイルの涙を持ち去って行った。


森の中は暗く、昨日はすぐに辿り着いた洞窟を、ガイルはなかなか見つけ出せずにいた。

湖の横を通り、そのすぐ奥の洞窟だったはず・・・

馬の速度を落とし、ガイルはゆっくり歩かせた。

ガイルは、大声でサージェルを呼んだ。



「サージェルーーーーーー!!サーージェルーーーー!!」



「ブルルルッッ・・・」


突然、歩かせていた馬が立ち止まり、前に進まなくなった。



---- パシッッ


ガイルは、馬を鞭で打ったが、一向に進もうとしない。

進むどころか、抵抗して、後戻りさえしようとしている。

ガイルは、ハッとして前を見た。

夜の雲が晴れ、月明かりが森の中を照らした。

ギラリとした無数の目が、ガイルとガイルを乗せた馬を睨んでいた。



「オオカミか・・・」


ガイルがそう言うと、オオカミたちは足音を立てずに、ガイルたちにゆっくりと近づいてきた。



「ヒヒーーーーンッ」



---- ドサッッ


馬が突然立ち上がり、ガイルを振り落としたかと思うと、馬はその場を走り去ってしまった。



「・・・クッ・・フフ・・クククッ・・・夫婦で・・オオカミの相手か・・・」



あまりの悲しみに、ガイルは涙を流しながら、笑っていた。


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