≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
「ハッッ・・・生きてるっっ!!

生きてるよ!!

良かった!

本当に良かった!!」


母子共に、無事に出産を終えた事に、サージェルは涙を流して喜んだ。


「ずいぶん時間がかかったけど、無事で良かった。

今夜は山焼きが行われるから、早く場所を移らないと・・・」



サージェルは、ようやく『時間』というモノを思い出した。

洞窟が暗くなったのも、陽が沈んだせいだという事に、やっと気を留めた瞬間だった。



「母さま・・怒っているだろうな・・・。

でも!今日はツイてるよ!

王様は、おっしゃった事を変えないお方だけど、陽が沈んでも山焼きが始まってないし!

王様のご機嫌が、変わられたのかもね。

とにかく、僕たちは運がいいよ!」



産まれてすぐ、一生懸命立ち上がろうとする子鹿を見守る母鹿に、サージェルは語りかけていた。


「サージェルッ!」


洞窟の外から呼ばれた声に、サージェルは振り返った。

暗がりでも、それが誰なのか、サージェルには声で判った。


「父さま・・!!」


サージェルは、父親が自分に近付き、お尻をぶつ場面を想像した。

案の定、父親はズカズカとサージェルに近付いてきた。


「父さま、ごめんなさいっ!!」


サージェルは、覚悟を決めて神妙にしていた。

しかし、父、ガイルは、無言のまま、サージェルの手首を掴むと、力ずくで洞窟から連れ出した。


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