≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
洞窟の外に出ても、ガイルは、サージェルの顔を見ることは無かった。

ガイルはとにかく、サージェルの手を引き、前にどんどん進むだけであった。

サージェルは、自分の手首の辺りが、なにかヌルヌルするのを感じ、父の手を見た。

月明かりにも、その手は血でべっとりと汚れているのが判った。

父の衣類にも、沢山の血がついていた。

サージェルは驚き、逆に父の手を引いて、立ち止まった。



「父さま・・・!!

父さま、大丈夫?!

血が沢山・・・

どこか怪我でもしたの?」



ガイルは、息子の顔を見る事なく答えた。



「私は大丈夫だ・・・。

母さまが待っている、急ぐぞ。」



そう言って、サージェルの手をグッと引いた。

しかし、サージェルは抵抗し、動かなかった。



「父さま、待って!!

今ね、今やっと子鹿が産まれたんだ!

逆子で大変だったけど、やっと産まれたんだ!

でも、まだ立てないんだ!

今日は、山焼きは中止になったの?

今日あるのなら、子鹿を別の場所に移さなくっちゃ・・・」



サージェルの手首を持つガイルの手が、さらに強く力を込めた。



「子鹿・・・それがなんだというのだ・・・・」


その力に、サージェルは更に抵抗した。


「父さま・・痛ッ・・・!!

新しい命だよ!

確かに、僕は約束を破ったよ!

その罰は受けるよ!

でも、父さまだってどんな命にも意味がある!って・・・

無駄な命なんて無いんだ!って・・・」


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