≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
オレは上りボタンを押していた手をパッと離した。
もう、エレベーターに乗る必要がないからだ。
「あら?早かったのね。」
エレベータを降りてすぐ、思わぬ客人に出くわしたかのように日村先生は少し眉を上げてみせた。
でも、〝かなりビックリした!!〟という表情でないのが残念だ。
一度先生の本気でビックリした顔も見てみたいと思う今日このごろでもある。
これって、多分オレが日村先生にだいぶ慣れてきたという証拠だと思う。
新しい刺激を求める時とは、たいてい慣れが生じた時だ。
「あ・・・はい。ちょうど電車が来たんで、飛び乗ったら意外に早く着きました。」
「そう。・・・じゃぁ、ちょっと出ましょうか。」
「はぁ・・・・」
オレはそう返事して、日村先生についてもう一度回転ドアをくぐり抜け、クソ暑い外に出た。
汗でベトついたオレの髪とは対照的に、日村先生の長い黒髪は相変わらずサラッとこの蒸し暑い風にさえなびいている。
しかし、すぐに先生は1つビルを通り越した先のカフェに入っていった。
オレがいつも先生との待ち合わせに使うカフェだ。