≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
「酷いだと・・・?

誰のせいで山焼きが遅れたと思っているのだ。

お前の母親が泣いて頼むから、オオカミから逃げ切れる間だけ、山焼きを待ってやったのだ。

簡単に喰われおって・・・。

つまらん見せ物だったわ。

せめて、生まれたての鹿の肉がどんな物かくらい、味あわせてみよ!」


サージェルは、子鹿を庇うように楯になった。



「お願い致します。

おやめ下さい・・王様・・・」



「お前がそこに立っていても同じ事だ。

お前を射った後に、子鹿を射るだけのこと。

まぁ・・矢を1本多く使うだけの事だ。」



王は何のためらいも無く、構えていた矢を放った。

サージェルは、目を閉じた。


---- グサッ・・


矢が刺さる音はしたものの、サージェルは痛みを全く感じなかった。

サージェルはうっすらと目を開けた。

サージェルが目を開けると、自分を庇うように、父ガイルが両手を広げて立っていた。

王の放った矢は、ガイルの脇腹の辺りに刺さっていた。



「と・・父さまっ!?」



サージェルの胃は、凍りつくようだった。



「サージェル・・・行きなさい・・・」



ガイルはかすれた声で、サージェルにそう言った。

サージェルは、首を横に何度も振った。



「い・・イヤです・・・。

僕のせいで・・・父さまも・・・母さまも・・・」



「その子鹿を連れて、出来るだけ遠くへ・・逃げるんだ・・・」


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