≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜

『良かったわ・・あなたが聞き分けの良い子で・・・』


サージェルは、朝の母親の言葉を思い出していた。


『今日だけは、母さまの言う事を聞いてね・・・』


その言葉が、どれだけ大事な事だったのか・・・

・・痛いほど・・苦しいほど・・サージェルは後悔の念に囚われていた。

あの美しかった母親が、あんな姿で最期を迎えるとは、サージェルは想像もしていなかった。

王に忠実で、強かった父が、あんな形で王に刃向かうなど・・・どうしたら考えられただろうか。



「・・・まだ、立っておるわ・・。

まだ生きておるか。」



王は、部下にガイルの側に近寄らせた。



「・・・ま・・だ・・ま・・だ・・あぁぁ・・・」



ガイルは、目を見開いたまま立っていた。



「・・い・・生きておられます・・・」



近寄った兵士は、怯えながら王に報告した。



「フンッ・・10本は刺さったぞ、まだ生きておるのか!

さすがにしぶといのう。

では、これではどうだ・・・」



王が放った矢は、ガイルの身体を逸れた。

矢が逸れたというより、ガイルの身体が逸れ、あおむけで地面に倒れた。

体中に矢を受け、その痛々しい姿のまま、ガイルは息を引き取った。



「結構時間を稼ぎおったわ。

山焼き隊は、すぐさま火を放て!

この山全部、焼き尽くしてしまえ!」



王の低い声が、山焼き隊に響くと、後方で控えていた山焼き隊は、全員弓矢を構えた。

そうして構えた矢の先に、火を点けた。

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