≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
「ゴフッッ・・・」


子鹿が息を引き取ったのを見届けると、サージェルは咳き込んだ。

咳には血が混じっていた。

咳をする度に、その血の量は段々と増えていった。

サージェルの胸を貫いた矢が、サージェルの内側から、その肉体を蝕んでいた。


「ハァ・・ハァ・・ハァ・・鹿の・・お母さん・・・

・・・ごめんなさい・・・

僕・・・守ってあげられなかった・・・

・・・ごめんなさい・・・

・・・父さま・・・

・・・母さま・・・

・・・ごめんなさい・・・

・ハァ・・生きられなくて・・

・・ごめんなさい・・・ハァ・・

でも・・・なぜ・・・?

なぜなの・・・?

ハァ・・・ハァ・・・

生きる事を・・守ることが・・・

いけない事・・・?」



サージェルは、火の雨が降るのを眺めながら、黒い涙を流した。

ススで真っ黒に汚れた顔では、透明な涙も、真っ黒に変えてしまっていた。

サージェルは、苦しい中、段々と意識の薄れる中で、ずっと考えていた。



『どうして・・・?

どうして、助け合って生きてはいけないの?

どうして一番強い者は、弱い者を守らないの?

どうして、お互いを認め合い、共存しないの?』



サージェルはいつしか、痛みや苦しみを忘れ、その事だけをずっと考えていた。



『僕がおかしいの?

僕がおかしいから、父さまや母さまは死んだの?

いや・・・

僕がおかしいんじゃない・・

王様がおかしいんだ・・・

王様は皆を守るべきだ・・・』


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