≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
「そう。

しかし・・その炎を、あなたの言う正義に置き換える域に達するには、あなたはまだまだ未熟。

これから、長い時間をかけて、この暗闇で修行をしなければならないわ。

それでもいいの?」



「僕はもう・・・失うモノは在りません。

ただ・・弱い者が踏みにじられるしかない世界を変えたい。

苦しみを・・受け入れる事しか出来ない者たちを、救いたい。

そのためなら・・どんな修行も・・辛くはありません。」



「後悔はないわね?!」



「はい。」



サージェルがそう返事をすると、光への道は段々と細くなり、全く見えなくなった。

辺りは、ただ無限の闇だけがあった。



「サージェル・・・では、あなたは生前の名前を変えなくてはなりません。

私たちの世界の、仲間として。」



「生前・・・?

僕は・・死んだんですか?!」



「そうです。

森の中で、矢を受け、そのまま炎に焼かれ、誰にも埋葬されず、亡くなりました。

あなたの家族も、鹿の親子も、誰にも弔われず、屍は地に帰りました。」



サージェルの中の火が、一段とその炎を強くした。



「父さま・・母さま・・・どんなに無念だった事か・・・

息子の僕まで殺されて・・・

誰にも弔われず・・・」



「たった今から、あなたの名前はナイジェルとします。

Nの韻を授かり、皆があなたをそう呼ぶでしょう。

ナイジェル・・しっかりと、修行に励みなさい。」



「はい・・・」


ナイジェルの澄んだ青い瞳は、曇った空を映した海の色へと変わった。


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