≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
『そうですか。

ただ、あなたの代わりは、いくらでもいるでしょう。

弱い者を助ける仕事に対しての代わりは・・・います。

しかし、あの2人を救えるのは・・・

あなただけです。』



ナイジェルは、白い空間の中で、顔を覆って泣く母親とその隣でうつむいている父親を、再度見せられていた。



「・・・分かりました。

Nの韻を・・・放棄します。」


ナイジェルは覚悟を決めた。

ナイジェルは、ナイジェルなりに沢山の魂を救ってきたつもりだった。

親を殺され、子供を殺され、生きる場所さえ奪われ、そのまま命を落としていった者たち。

その者たちの恨みや、未練を理解し、共にその復讐に関わってきた。

地上に未練を残し、成仏できない魂がどれだけいるのか、ナイジェルは哀しいほど知っていた。

しかし、自分が最も愛し、愛された者を、これほどの長い間苦しめていた事を思うと、ナイジェルは、Nの韻に囚われている事が、苦しくなったのだった。



『分かりました。

あなたの意志により、たった今Nの韻は解かれました。

あなたから、ナイジェルの名を剥奪します。』



その瞬間、ナイジェルを囲んでいた白い光が一瞬散らばった。

その隙間にナイジェルは、数珠を構え、ジッと自分を見ている令子と目があった。

令子は、フッと笑った。

ナイジェルも、それに応えるように目を細めた。


すぐに白い光は形を変え、天に届くような太い柱を作った。

もうナイジェルからも令子からも、お互いの姿は見えなかった。


---- シュッッ・・


一瞬のうちに、ナイジェルはテレポーテーションしたかのように、知らない所に立っていた。

着ている服も、生きていた頃のように真っ白な衣を身体に巻き付けていた。

腕輪も無くなっていた。


しかし前方に、顔を伏せて泣いている母親と、その隣で黙って立っている父親を見つけた。


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