≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
半分腰を下ろし掛けていたオレは中腰のまま、メニュー表と睨めっこしていたが、後から店内に入ってきた客に先を越されそうになり、テーブルに置かれた2千円を掴み、慌てて注文カウンターに駆け寄った。


カウンターには、背のあまり高くない目のくりっとした女の子が店のロゴの入った、赤いキャップを被ってニッコリして立っている。オレが行く時もいつもいる店員だ。


オレは、まず日村先生の注文から先に頼んだ。


アイスコーヒーとクロワッサンサンドのハムチーズと卵とレモンケーキ。


それを一気に言い終えると、カウンター内の女の子は



「以上でよろしいでしょうか?」



と尋ねるので



「いえ・・・あの・・・・」



オレは必死で、今注文した分からの2千円の残りを必死で頭の中で計算しつつ、いつもは頼まないコーヒーの上にたっぷりのホイップクリームの乗った、アイスウインナーコーヒーを注文した。しかもTALLサイズで。前から一度飲んでみたかったのだが、男1人でホイップクリーム・・・ってのも・・・なんか・・・ねぇ・・・ってカンジで・・・・



「以上でよろしいですか?」



「は・・・はい・・・」



オレの暗算では、恐らく2千円で収まっていると思う。

しかも何百円かはお釣りがくる。

勿論、足りなければ自分で出せばいいのだが、ここが社会人の難しいとろこなんだ。


目上の相手に『おごってあげた』と気分よく思わせておいて、こっちも『おごってもらっちゃった』風な有り難いカンジでおごってもらって、しかも、全部使わずにちゃんとお釣りを余らせて、『これお釣りです』なんてあなたのお金大事に使いました風な意味合い込めてお釣りを渡す。そして『コイツ結構堅実なんだな』っていうのを示すのが社会での生き方だし、礼儀なんだし、空気読むってコトだ。

そうなんだ、こういうコトなんだよオレが樹花に言いたかったのは!





・・・・そうだった、まだ樹花に謝ってなかったんだっけ・・・



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