≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
山田氏の言葉を無視し、統帥霊は話し続けた。


「わかりました。

私としても、守護する者としてあなたがた全員を救いたかった。

しかし、私たちを狙う力があまりにも強すぎて、すでに貴女と娘を守っていた守護霊は、もう力を使い果たしてしまいました。


私自身も、主であるこの山田家の当主に常につかなければなりません。

その上さらに、あなた方2人を守る事は至難の業。

しかし、人間界のある女性に私はすでに手を回しました。

もうすぐ彼女が、この状況を救ってくれるでしょう。

しかし・・・

今の段階では、どうしても2人残せません。

そして、今動かされた歯車が噛み合う未来の場所に、私は瞬時に飛べる体勢を取っておかねばなりません。

あなたの覚悟により、娘を助ける方向で動きます。

そして、実質的に助けるために、もう1人役に立ってもらわねばなりません。

あなた方の家族を1人、しばらくお借りしますよ。」



その言葉を聞くと、由利恵はうっすらと微笑んだようだった。

すると、その女性の身体からフッと美しい女性が浮かんできた。



「それでは、行きますよ、由利絵さん」


統帥霊は、今肉体から離れたばかりの山田氏の奥さんに話しかけた。

宙に白っぽく浮かぶその女性は、特に表情を変える事なく、統帥霊とどこかへ向かって消えた。



下の方では、医師や看護婦がバタバタと動き回り、絵里香ちゃんも泣き叫んでいた。


こうして、絵里香ちゃんの母親は亡くなったのだという事を、オレは知った。



フッ・・と、オレの意識が途切れたかと思うと、また違う場所に来ていた。


薄緑色を放つ、山田家の統帥霊と由利絵さんは、長い階段のある神社へやって来た。


神社の階段のふもとで、一匹の白っぽい犬が、赤い首輪と赤いリードをしたまま、一点をジッと見つめていた。

犬の見つめていた先は、救急車が去っていく様子だった。


---- ハッ ハッ ハッ・・・


犬は暑い中、口を開けて舌を冷ましていた。


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