≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
『ハチ・・・・』


霊体となった由利絵が呼ぶと、クリーム色の犬は宙を見た。

ハチと呼ばれた犬は、確かに宙に居る由利絵さんを見ていた。


---- クゥー・・・ン・・・


犬は淋しそうに鳴いた。

薄緑色の光を放つ統帥霊に見守られながら、由利絵さんの霊体はハチに語りかけた。


『ハチ・・・ごめんね・・・

私には、もう・・肉体が無いから、あなたに手伝ってもらいたいの。

絵里香を守るために、私と一緒に時期を待ってほしいの・・・。

ハチ・・・あなたしか居ないのよ・・・』



由利絵さんがそう言うと、ハチはシッポを振った。


---- ワンッ!


と、一度だけ吠えたその声は、由利絵さんと同じ気持ちである事を、伝えているようだった。



『有り難う・・・ハチ・・・

では、追いてきて・・・』



由利絵さんはそう言って、ハチをしばらく歩かせ、ある一軒の古い民家の前へ連れてきた。

そこまで来ると、由利絵さんも統帥霊も姿を消した。

ハチがしばらくその民家の前でたたずんでいると、玄関の扉が開いた。


---- ガラッ


ハチは、その音に耳をピンと立て、中から出てきた人を見つめた。

中から出てきたのは、1人の老女だった。



「おや・・新客かい・・・。

このご時世に犬とは珍しいねぇ。」



老女はそう言いながら、ハチに近付いた。

ハチは老女が近付いても、動かずにジッとしていた。



「ふーん・・リードが付いてるね・・・首輪も・・

おや・・首輪に名前が・・・ハチ・・・

山田ハチっていうのかい・・・」


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