≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
オレは霊たちの気持ちを初めて知ったような気がした。


普段は誰も自分に対して『気付く』というコトをしてもらえないのに、こうやって生身の人間と目が合うというのはなんとも言えない不思議なカンジがした。

不思議なカンジというよりも・・・なんだ?!・・・そう・・・救われそうな気がした。

こうやって、霊っていうのは自分たちが見える人間にすがっていくんだろうな・・・と、思った。


が・・・、オレとしてはそんな思いにいつまでも浸っているヒマは無かった。


なぜならオレと目が合ったその瞬間、樹花は耳にケータイ電話をあてているその手から、スルッとケータイを落としてしまったのだ。


オレはもちろんとっさに拾おうとした。


しかし、同時に樹花もケータイを慌てて下に落とすまいとその手を伸ばした。


その先は、オレのイヤな想像どおりだ。


そこで樹花はバランスを崩し、そのまま階段の下に落下すべく宙を舞った。


しかし更に驚いたのは、次の瞬間だった。


もちろん階段から落ちたのは樹花だったが、落ちたのは携帯と生身の樹花だけだった。


・・・って・・・なんかフツーみたいに聞こえるけど、落ちる瞬間肉体と霊体が分離したのだ。


そうして、樹花の霊体はアッという間にどこかへ消えてしまったのだ。


オレはその一瞬にたじろいでいた。


するとまたオレの上の方から声がした。


「行くよ」


アージェルだった。

オレは結局、樹花の肉体が何故屋上付近の階段から落ちたのかという理由は分かったが(しかもやはり理由はオレのせいのような気がして罪悪感も感じている)、樹花の体が階段下に落ちる瞬間までそこに留まることはなかった。


最悪の局面は見ずに済んだが・・・一体樹花の魂はどこへ行ったのか・・・


もう・・・あとはアージェルに任せるしかないと思った。


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