≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
「この世に生まれ成長する中で、この地球上・・いや・・宇宙のすべての生物と共存共有しながら僕たちは生きている。」


「それは、分かっているというか…」


アージェルの口調は、オレの心を溶かすかのようにやさしい。


「だけど、その中で何かを与えたり奪ったりする。その行為そのものが愛だ。彼女の感覚は君とは違っていたのかい?」


「与えたり、奪ったり…⁈」


アージェルは樹花がオレのいない病室で過ごす時間を見せてくれた。

アスカと喋っている時、オレの心配ばかりをしていた。

オレが見舞いにくる頃になると手鏡で包帯を気にしながら髪を触り、笑顔の練習。

頻繁に開く携帯をのぞき込むとオレの写真ばかり…優しい眼差しで見ている。

オレは、KYは自分の方だったと反省した。自分ばかりが尽くしていると驕っていたことを悟った。

樹花だって同じだった。

どこにも行けないその狭い世界で、全身全霊でオレを思い、迎え入れてくれていた。どんな時でもオレを拒否したことなどない。樹花に出来る最大限をオレに与えてくれていたことを初めて感じた瞬間だった。


「違わない・・・」



オレは、アージェルにそう言い終えた時にはすでに樹花の入院している病室の前にいた。

もちろん今の個室ではなく、4週間前に通っていた部屋だ。

しかしオレは、意外にも早く樹花を発見した。

樹花は病室の入り口横の壁に、うずくまるようにもたれていた。

アージェルの姿はもうなかった。

今この目の前に居る樹花がVTRでないコトを確かめるべく、オレは樹花に近づいた。

オレが樹花にほんの少し近づくと、樹花は気配を感じたのかゆっくりオレを見上げた。



「・・・・ピカ・・ちゃん?!・・・探しにきてくれたの?!」



樹花としっかりと目が合った。



「樹花・・・・・」



「ごめんなさいっ!!」



オレが名前を呼ぶと、樹花はうずくまったままパッと顔を伏した状態で謝ってきた。



「私・・・ピカちゃんのコト・・・探してたの・・・探してただけなの・・・」



「うん・・・」



樹花の泣き虫は霊体になっても変わっていない。

もちろん、涙は出ていないけど・・・



「でも・・・見失って・・・・」



「うん・・・」



「やっと・・自分の病室に戻れたと思ったのに・・私のベッド・・・もう別の人が使ってて・・・」

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