≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜
それらの声は、3Fの山田の居るオフィスにまで響いた。


営業マンの顔は、今や真っ青になって身体も顔も固まっていた。



山田は眉をしかめながら、山田のデスクの背後にあるガラス張りの窓から1Fを見下ろした。



瞬間、山田は目を細めた。



山田の目に入ったモノは『何か』を囲んで出来ている人だかりと、

その『何か』がゴォゴォと真っ赤な炎をあげて燃えている様子だった。



炎をあげて燃えているモノは苦しそうな動きで地面に転がっていた。



3Fから見ても、それは明らかに『人』と解った。



山田は息を呑んでこの光景を見下ろしていた。



間もなく消防車と救急車が到着したが、それらが到着したのは燃えた人が完全に動かなくなったあとだった。



山田は振り返り、先程の営業マンに歩み寄った。



「なぜ、早く言わなかったんだ!!」



山田の睨み上げる視線に、営業マンは顔をひきつらせていた。



「こ・・・恐くて・・・言葉が・・・・出ませんでした・・・」



「なぜ、お前がこの手紙を受け取った?!」



山田の攻撃は続いた。



「と・・・得意先に・・資料を届けた後、会社に戻りましたら・・・

会社の入り口で・・・男が正座して座ってましたので・・・そんな所に座られては困る・・・と、言いましたら・・・

お・・・男は突然、右手に持っていた一升瓶の中の液体を自分の身体に頭からかぶって・・・

もちろん・・・臭いでスグ、灯油だという事が分かりました。

そ・・・そうしたら・・わ・・・私に、そ・・その紙を渡して・・・

それを責任者に渡せ・・・と言われましたので・・・あわてて・・・」



営業マンの目からは既に涙が何粒かこぼれていた。


メモから臭ったモノは、その時付いた灯油の臭いだという事に山田は気が付いた。


山田はしばらく黙った後、営業マンとその場に居た社員たちにこう言った。



「いいか、みんな!よく聞いてくれ!

会社内外共に、パニックを避ける為に、このメモの事は誰にも言うな!

いいな!社内の人間にも言うな!分かったな!分かったら仕事を続けろ!」



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