狂愛ゴング

私と目の高さが一緒になる。

やっぱりかっこいい。確かにかっこいい。遠目に見るよりもずっとキレイな顔をしていて、どこにも欠点が見当たらない。出っ歯とか、鼻の穴が大きいとか、そういうこともない。

ニキビもないし、毛穴だって広がっていない。
せめてでかいほくろくらいあればいいのに。

ただ、性格の悪さが若干にじみ出ているような気がする。
そういえば悪魔もキレイな顔をしているとか聞いたことがある。人を誘惑するために。

新庄の場合、悪魔という言葉さえかわいく思えるけれど、多分系統は一緒だろう。


ぼーっとそんなことを思っていると、目の前にプリントがひらりと揺れた。


「はい」

「え?」


ひらひらと右手でプリントを摘んで左右に揺らす。
えーっと、これは……私に渡してくれるってこと、だよね。


「ど、うも」


ただ、なんかすごい怖いんだけど。
笑顔が逆に怖い。

でも受け取ってさっさと逃げようと手をのばすと、プリントはすいっと私の手から逃げるように上に移動する。

え? と思う私の顔を見て、新庄はにんまりと笑いながら上にあげたプリントをひらひらと振り続ける。

まるで、私に餌を与えるみたいに。


「お前、2組の青柳だろ?」

「そう、ですけど……?」


血管がぴくぴくと動くのが自分でわかる。
いかん、いかんいかん、冷静になれ、私。

ってかなんで私のことを知ってるんだお前。


「俺と相性悪いだろうなーって、知り合いが言ってて、会ってみたかったんだよなあ」


私は会いたくなかったんですが。
そんなことを思われていたなんて虫唾が走るね。

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