狂愛ゴング
「クズ!!!!」
「てっめ……!」
新庄にジュースをぶちまけて、ついでに空になったジュースの箱を投げつけて走りだす。
「死ね!」
通りすがりに新庄を下からにらめるだけ睨み付ける。
「……ちょ……てめ……」
猛ダッシュで走ったから、すぐに新庄は離れていく。
後ろで新庄が怒ってる声が聞こえるけれど、そんなのどうだっていい。
目の前から消えて。
私の視界に入らないで。
私を見ないで。
私を——……乱さないで。
嫌い。大嫌い。そんな言葉じゃ物足りないほどに。
悔しい悔しい悔しい。むかつくむかつく。
全力疾走で教室まで必死に走って走って、色んなものを勢いに任せて振り払った。
あいつの言葉を真に受けたバカな自分。
いやそんなの想像すればわかったはず。そんなはずないんだから。
なのに。まんまと騙されて……なおかつその後の真実の言葉に……こんなにも痛い気持ちになる自分がムカツク!
「あ、お帰りー遅かったね……って……え!?」
教室に戻った私に、泰子が声をかけて私を見るなり慌て始めた。
ぜーぜーと肩を上下に動かしながら、返事も出来ずに泰子の元までゆっくりと近づいて、そして座ることもなく立ちつくす。
「ちょ……どーしたの!? 澄」
どうもしない。
なんてことない。
ただむかついただけ。
「なんで——……泣いてるの!?」
悔しいから。
悔しすぎて悔しすぎて。
泣きたくないのに、零れる涙が私を悲しくさせていく。怒ってるだけなのに泣き始めると悲しいみたいになってしまう。
だから涙は嫌い。大嫌い。
馬鹿新庄。クソ新庄。
もう関わらないで、もう乱さないで。
「うー……」
悲しいはずない。こんなこと。
なのに止まらない涙が、悲しい。
泣いていることすら悔しい。