狂愛ゴング

な、なに。
っていうか! 息苦しいんですけど!?


「——な、なによ!」


ばっと、息苦しさと驚きで手を振り払うと、新庄がぬっと私の真正面に顔を近づけた。
ちなみに……手は私の頭を掴んでいる……。

目の前にある新庄の手は、私の顔を包み込むほどに大きく、それが妙に気に入らない。落ち着かない。

加えて新庄の顔。ムダに整った顔立ちで、真面目な表情。実際には怒ってるだけなんだろうけれど、黙っているだけで様になるなんて贅沢だ。


消えて。今すぐに。じゃないとおかしくなりそうでむかついてむかついて仕方ない。


「今日は、にげんなよ」


うるせえばか。

だけど声には出すことが出来ずに、なにも言わない私に新庄はそのまま立ち去った。

別に逃げたい訳じゃない。逃げたくなんかない。だけど逃げずにはいられなくなるんだ。

なにかが溢れそうになる。悔しさにちかい感情。悔しい。どうしてこうなってしまったのか、その悔しさでいっぱいだ。


「あほっ」


小さく呟くくらいしかできない自分がより惨めに感じながら、足を踏み出して自分の教室に向かった。



学校が終わる時間が近づくにつれ、どんどんと気分が重たくなる。このまま早退でもして逃げ出してしまいたいほどに。

次の授業が終わればお昼ご飯。
それが終われば5時間目と6時間目、そしたら放課後だ……。

あああああああああーもういやだああああああー!!
死刑宣告された囚人ってみんなこんな気分なのかなー!
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