狂愛ゴング
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目を覚ますと、自分の瞼の重さに昨日のことを再確認した。
「腫れたなあ……」
数時間もすればすぐにおさまるとは思うけれど。相当ひどい。今までこんなに泣いたことはなかっただろう。
ため息をつきながら自分の目を軽くこすって、携帯のアラームを止める。
なんであんな奴のことで、こんなに泣かないとならないんだ。私の人生初はことごとくあいつに奪われている気がする。
思い出したらムカムカしてきた。
悲しい気持ちも同じくらいにわき出てくる。
「あーもう!」
ばさっと布団を被ってもう一度目を閉じた。
寝ている間くらいはなにも考えなくていいからそれでいいじゃない。
2、3日寝てたらなにかが変わって、気のせいだったことにはならないだろうか。なるかもしれない。そうだ、これは新庄の洗脳に違いない。
しばらく安静にしておこう。洗脳が解けるまではこうして布団にこもっておこう。
「澄! いつまで寝てるの!」
起きてこない私に、母が大きな足音を鳴らしながら私の部屋に向かってくる。
「……頭痛い」
嘘だけど。
幸い目が腫れていたからか、私の顔を覗いて少し心配そうな顔を見せた。
いつもは私以上に負けず嫌いで気の強い母だけれど、こういうときは優しい。
「なに汚い顔してるわね」
……優しさの裏返しだと信じている。
「なに? 休むの? なら電話しとくけど? そんなにひどいの?」
「んー……休む……」
もう一度布団を被って籠もった声で返事をすると、母は「もー」と呆れながらも降りていった。