狂愛ゴング




人の性格というものは、簡単に治るものではない。

そんなの私にだってわかっている。治せるものなら自分の性格を治したいと、おそらく世界中で1番強く思っているのは私だ。

ああ、本当に。

どうして私はこんな性格に生まれてきたのだろう。





「俺に謝れよ」

「ご、ごめんなさ……」


男女の修羅場、らしき現場に遭遇したのはかれこれ5分ほど前のこと。

放課後、プリントを運んでいると風で数枚飛ばされてしまい、しぶしぶ探しに来たこの裏庭で、私は小さくうずくまり、息を潜めている。

プリントは見つけたんだけど……彼らの足元だ。なんでこんな現場に遭遇しなきゃいけないんだろう。
かといって、堂々と『どーもすみませーん』と間に割って入れる雰囲気でもない。

こそっと顔をのぞかせれば、ひとりの男とひとりの女が向かい合って突っ立っている。

男のほうは……新庄だ。あの、“ウワサ”の新庄。
なおさら、ふたりの間に入るべきではない、と私の中で危険信号が鳴り響く。


プリントなんて放置して帰りたいけど、あの先生小言が長いからなあ。

さっさと終わってどっか行ってくれたらいいのに。痴話ゲンカが他所でやってくれませんか! ここは学校なんですけどー!


プリントを提出したら友達と最近出来たってウワサのアイスを食べに行く予定だったのにな……一体いつまでこんなつまらないことで時間を無駄にしなくちゃいけないんだ。

ケータイも教室に置いてきちゃって連絡もできないし。

はあ、と溜息を落として再びふたりに視線を向けた。
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