狂愛ゴング
新庄は明らかに不満そうな顔をして腕を組みながら、ロングヘアーの彼女……らしき女の子を見下ろすように立っている。
彼女、らしき女の子はおそらく泣いているのだろう。
少し震えながら小さな声で何度も謝っている。
なにをしたらあんなに怒られるんだろうか。
ただ、新庄は身長がでかいからすごい威圧感がある……あんなんで睨まれたらたまったもんなじゃないな。
かわいそうに、と思いながらも私はただじっとしていた。
「あー……、もーいいや」
「……え?」
めんどくさそうな新庄の言葉に、女の子は顔を上げた。
私の場所から表情は見えないけれど……よかったね、ゆるしてもらえたのね。じゃあさっさとおてて繋いで帰って下さい。
そう言いたいところだけれど……私の位置から新庄の表情はよく見える。口端を少しあげて微笑む顔は、正直根性の腐った男のようにしかみえなかった。
多分実際腐っている。腐りきった最低の男だ。あれで不細工だったら顔を殴ってやるところなんだけれど、生憎顔だけはいい。
「もーいいよ、終わり。お前面白くないんだもん。もーやーめた」
「え? ちょ……新庄くん!?」
新庄の言葉に、女の子は焦った様子で彼の腕に手を伸ばすと——……ばしっという乾いた音が響く。
「触んな」
さ……さいってい……!
開いた口がふさがらないってきっとこういうことなんだ。
カスだ。人間のクズだ。
すがる彼女に、新庄は手を払って相変わらず見下ろすように睨み付けた。彼女は、呆然と立ち尽くしてから、諦めたのか耐えきれなくなったのか、新庄に背を向ける。
ぎゃーこっちくるー!!!
慌てて、出来るだけ小さくうずくまると、走り去る女の子は傍を通ったけれど気付かないで行ってしまった。