狂愛ゴング
だけど否応なく私たちの距離は近づいて、目の前にそれはそれはキレイな、悪魔、なんて呼ぶのももったいないほどのカスの顔が私の視界をうめつくす。
「仲よくなるために付き合おうってね」
「なーにが仲よくだ……」
そんなことこれっぽっちも思ってない癖に……。
仲よくする気なんてあるはずない。そんな顔をしてない。目は楽しみさえもない。怒りしか感じませんけど?
人の頭にアイス乗っけてケラケラ笑うような人間と仲よくしたいなんてこれっぽっちも思わない。
「じゃあ断る?」
——ん?
新庄は私から顔を離して、にこりと微笑んだ。
「お・れ・は、仲よくしようと思って、付き合おうかって言ったけど……お前はそれが『で・き・な・く・て』いやだって言ってるんだろ?」
——……俺は? お前は……?
「俺は別に付き合えるし? 俺は出来るけど? お前が出来ないんじゃあ仕方ないか」
え? なんなの。
なんでそんなふうに言われてんの私。
「出来ないんだろ? 俺は出来るけどね。嫌いな相手とだって一緒にいれるくらいの心のひろーい性格だけど? お前は嫌いなものには、臭いものには蓋をして逃げるんだなあ」
いや、いやいやいやいや
なんすかそれ。お前に出来て私に出来ないはずないでしょ?
っていうかあんたみたいな人間のクズと私を一緒にしないでくれますか!?
「なに、勝手にきめてんのよ……出来ないなんて言ってないでしょうが!」
「あ、そう? じゃあ付き合う?」
ぐっと言葉に詰まる。
いや、さすがにね……付き合うとかは遠慮したい。
そもそも自慢じゃないけど恋愛経験は小学校で止まってるんだよ? ないも等しいのにあんたなんかと付き合ったっていう事実は欲しくない。
汚点だ! 末代までの恥! 切腹するしかない!
でもここで、こんな言い方されて私から“できません”というのは悔しい。負けるような気がする。こいつのほうが優位になる。そういう言い回しをしているんだ、こいつは。
負けず嫌いで有名な私の心をボキボキに折るために。
ぐぐっと睨む私に、新庄は勝ち誇ったように笑った。