狂愛ゴング
「別れてからそんなふうにうっとうしくなる女なんて面倒だけど」
「あんたって……彼女のこと好きだったの?」
新庄の言葉に、思わず呆れながら口にしてしまう。
好きな女の子にあんな態度をとるものなのか。別れてからそんなセリフを口に出来るのか。
とてもじゃないけれど好きなようには思えない。
だとすればなんで、付き合ったのか。
私の言葉に、新庄は口をもぐもぐと動かしたまま私を真っ直ぐに見る。
「なによ」
「別に……それ、お前に関係あるの?」
別にないけど。
気になっただけじゃないか。
「言いたくないなら言いたくないって言えばいいのに。別に無理矢理聞き出したいほど新庄に興味ないわよ」
自分の質問が無駄に思えて深く息を吐き出しお弁当を食べ始めた。ほんと、この男とは会話にならない。なに考えているのかさっぱりわからない。
もしかしてこいつの頭には脳みそないんじゃない? スポンジか。もしくはカニミソか。
「俺、人の怒ってる顔とか、傷付いてる顔とか、いやがってる顔大好きなんだよなあ」
「……は?」
だからなに。
「それで、傷つけてもいいって? 本当に最低だよね」
「俺は傷つけてるつもりじゃないんだけどなあ」
よく言うよ。
そんなこと微塵も思ってないくせに。
私の顔をみて、新庄はくすくすと笑い始める。その笑い顔は本当に楽しそうで、だけどそれは私が楽しいときの笑い方じゃなくて……なんというか。
マジでこいつ意地が悪いな、って一発わかるような笑い方。
思わず私も心底いやそうな顔になるくらいには。