狂愛ゴング
◆
気がついたら、食べかけのお弁当箱を手にして走りだしていた。
……な、なんだったんだ今のは……!
夢? 白昼夢でも見てたのか? え? え?
全力疾走して自分の教室に向かう。パニックでなんかもうわけがわからない!
「あ、澄早かったねー。ランチデートはどうだったー? って、聞くまでもないかっ! ねー、澄」
教室に着いて、ゼーゼーと肩で息をしながら席に向かう私に、泰子がいつものごとく明るい声で思い切り私の背中を叩いた。
ガクン、と身体を前に倒して痛みに堪えながらゆっくり振り返る。
「……あ、うん」
痛いのに、泰子に文句1つも出てこない。
ちなみに私を放置したことにも文句を言いたかったのに。
私はなにをされたんだ。
私はなんでされたんだ。
なんでどうしてあいつはあんなことを……? あんな、あんな……。
——……思い出すとどうしても新庄の顔が思い浮かんでしまう。そして、触れた……唇の感触。
「どうしたの澄……顔、真っ赤だよ?」
「赤くない!」
赤くなってたまるかコノヤロウ!
クワ! と泰子に食い付く勢いで振り返った。
悔しい悔しい悔しい。
なんであんなことになってしまったのか。させてしまったのか。
もっともっともっっと……あの時に拒否する方法はあったはずなのに。 突き飛ばして帰ればよかったんだ。ひっぱたけばよかった。っていうかもう殺しちゃえばよかったんだ。あんなカス。
しかもなんで逃げてるんだよ私は! 一発殴ればよかった!
わた、私の……ファーストキス!