狂愛ゴング

他の女と、って言ったのは新庄の方なのに、それでもいいと言った女をボロクソに言うとかなにがしたいんだ。

新庄にとって正解の答えってなんなんだ。多分正解なんてないんだろう。なに言ってもボロクソに言って泣かせるに決まっている。

女も女だ。
わかっていて告白するはまだしも、なんで廊下なんかで告白するんだろう。しかも彼女いることだってウワサになっているのに……。

魔術かなんかかけられているんじゃないの?
魔法使いか。いや、そんないいもんじゃないな。


「さっぱり理解できないわ」

「澄の場合は恋愛自体に理解が足りないしね」

「……どういう意味よ、それ」


確かに、今のところ恋愛した覚えはないけれど。

これはそう言う次元の問題じゃないと思う。


「それでも好きなんでしょ? 私にも理解は出来ないけど、好きだからって気持ち自体はわかるかなー」

「そういう問題かなー趣味悪すぎる」


無意味で無謀で、無駄。
そうとしか思えない。


「相手が新庄でなければ、ちょっとはわかるけど。あいつって時点でないわ、ないない。ありえない。あんなクソ男」

「澄は本当に新庄くん嫌いよねー。同族嫌悪?」

「やめて! 一緒にしないでよ」


そう言うと、泰子はケラケラと笑った。

奴と一緒にされるなんて死んでもいやだ……!
ただ、嫌いということは正しい。あんな男は大嫌いなのだ。


「新庄くんと澄は絶対相性悪いよねえー」

「わかってるから、関わらないようにしてるんじゃない。正直話も聞きたくないっての」


同じクラスになったこともなければ話したことも一度たりとも無いけど、話を聞くだけで虫酸が走るくらい嫌い。そんな外道な人間。

そんな変なやっかいな男となんか死んでも関わりたくない。

……自分の性格を、イヤってほどわかっているからこそ。
< 7 / 153 >

この作品をシェア

pagetop