狂愛ゴング
「面白かったらなんでもするんだね」
トゲのある言い方と声で、少しだけ新庄と離れて歩く私に、新庄はそれすら面白そうに笑った。
「優越感って、セックスより気持ちいいからな」
はい、サイテー。
……あー、そうですか。そうですか。
あんたにとっては面白いことがなにより優先なんだね。わかってたけど。
「好きな女の子がセックスしたいって言ったらどうすんの」
「するわけねーじゃん。面白くもなんともない。基本俺奉仕って好きじゃねえし」
「っていうかあんたに好きな人なんていないんじゃないの? ナルシストだよね究極の。自分以外好きじゃないもんね」
自分が一番大好きで、自分が楽しければいい。
自分だけで相手のことなんかどうでもいいんだろう。
改めて最低のクズ男だ。
「あんまりむかつくこと言うとここで脱がすけど?」
「…………」
謝りはしないけれど、さすがに口を結んであさっての方向を見つめた。こいつなら本当にやりかねない。
——図星なんじゃない。
とは、さすがに言えなかった。
すいませんね、口だけ達者なへたれですいませんね。
まあ確かに難しそうだよねえ。そんな女の子を見つけるのって。
こいつにこの先好きな人なんか出来るのかな。
受け身で健気な女の子が好きなのかと思ってたけどそうでもない。
本気でいやがっていないといやだと言うのは、自分のことを好きな人にはなかなか難しいだろう。
新庄がどんな人を好きになるのか、全く想像できない。
でも、万が一、そんな人が新庄の前に現れたら、どんな感じになるんだろう。
人を好きになったら、どんな新庄になるのだろう。
優しくなる……とか?
本気で想像できないんだけど……。そうなったら私舌噛んで死んでもいいくらい、ありえない自信がある。
やっぱりこいつは違う星の住人に違いない。この星の住人では対応出来る人なんていないと思う。