狂愛ゴング
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「最近変わったよねーでも本当に」
お弁当をぱくっと口に含んで口をもごもごと動かしながら泰子が私に言った。
「なにが」
脈絡なく話されてもわかんないわよ。
私は購買で買ったパンの2つめをばりっと大きな音を立てて乱暴に開ける。
本当は“なにが”なんて聞かなくても見当はつくからこそ、乱暴に。
「新庄くん」
「どこが」
なにも変わった気はしないけど。
「澄への態度かな? 優しい、とは言いにくいけど今までの彼女とは違う感じがするよね。楽しそうじゃない、一緒にいると」
あれで優しかったら今までどんな付き合い方してたんだあいつ。あれで優しかったら世の男性が発狂するよ。
今までの彼女と違うように見えるのは、私には思う存分いやがらせができているからだと思う。
そりゃあいつにとっては楽しいだろう。
「でも、1ヶ月だっけ? そろそろ。新庄にしたら長いじゃない。澄は比べようがないけど。なんだかんだうまくいってんじゃん」
「1ヶ月でながいとか。むしろ短いでしょ」
「いやいや、新庄以外で1日ですら付き合ったことのない澄に言われても……」
すいませんねー!
「澄のこと本当に好きだったりして」
「冗談でしょ。こっちがお断りよ」
眉間にしわを寄せて、めいいっぱいいやな顔をする。
あいつが私を好きになるはずがないし、そもそも好きじゃないから一緒にいるわけで。
ぷすっとストローを突き刺して買ってきたオレンジジュースを勢いよく吸う。